2011年5月21日土曜日

平田オリザ ロボット演劇 - 人間とロボット「心」問う共演 平田オリザ「森の奥」

平田オリザ ロボット演劇 - 人間とロボット「心」問う共演 平田オリザ「森の奥」
人間の俳優とロボットが共演する平田オリザ作・演出の演劇「森の奥」が、名古屋市で21日に開幕する国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」で初演される。ロボットが日常的に存在する未来を提示し、「人間とは何か」を問いかける。

 7月末、平田が教授を務める大阪大学の豊中キャンパスでけいこが行われた。人間と一緒に演技するのはロボット「wakamaru」。事前に入力したセリフや動きを遠隔操作で調整する。

 平田の作品は、何人もの会話が同時に進む「同時多発会話」で知られる。「役者の立つ位置、動き、表情など、およそ言葉にできる範囲のものは、すべて戯曲におさめるべきだ」(『現代口語演劇のために』)と主張し、「自然な会話」を人工的につくり出してきた。

 「4秒くらいあけて」「もっとたっぷり」。秒単位で発話や動きを調整することで「自然さ」を生み出す演出法は、人間でもロボットでも変わらない。「エェ」「アァ」。そんなあいまいな言葉も発するロボットと人間の会話はごく自然だ。

 「ア、スミマセン」と手を組んで頭を下げる姿は、申し訳なさそうな「気持ち」を感じさせる。平田は「人間だって本当に『すみません』と思っているかは分からない。ロボットと同じ」と話す。

 平田は教授就任を機に阪大の「ロボット演劇」プロジェクトに加わった。一昨年には約30分の短編を上演。「内面がなくても、演技ができて人を感動させられることは、早い段階で証明できた」と自信をみせる。

 ロボット研究者としてプロジェクトに携わり、舞台のテクニカルアドバイザーも務める阪大大学院基礎工学研究科の石黒浩教授は「直感で演出している部分に、結果的に心を感じる。そこに法則を見つけられると、そのうち形や振る舞いから心の中身に迫れるかもしれない。一緒にやっていてヒントをもらえる」。

 今回上演される「森の奥」は、類人猿の研究施設を舞台に人間とロボットがサルとヒトの境界について対話する。90年代に「科学シリーズ」として書いた3部作を下敷きにした2008年の作品を、ロボット版に改めた。

 人間同士の会話から人間のおごりが透けて見えたオリジナルの持つ皮肉は、ロボットの登場でより強まる。

 「観客に混乱して考えてほしい。人間とは何か、心とは何か。私たちが漠然と規定しているものに揺さぶりをかけたい」と平田。日々の暮らしにヒト型ロボットが登場する日はそう遠くないとみる。

 「当然そこには愛情が生まれる。その時、ロボットに心を感じている人を無視できるのかという問題に私たちは直面している」。作品では、そんな未来も想定し、ロボットが普通にいる日常を描いた。

 公演は21~24日、名古屋市東区の愛知芸術文化センター小ホールで。平田が参加するアフタートークも連日予定している。問い合わせはトリエンナーレ実行委事務局(052・971・6124)へ。(増田愛子)
 
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