平田オリザ ワークショップ -
演劇の世界では、あまりにも著名な平田オリザさん。私などがここでヘタな説明をすることなどまったく不要な気がします。それよりも、なぜ私が平田さんのワークショップに関心を持ったのかを前書しておく必要があると思います。
・感情だけで語らない、論拠の明確なアウトリーチとアーティスト・イン・レジデンス
・ワークショップを通じたコミュニケーションに関する考え方
これら2点について、どうしても知りたいと思ったのです。なぜならば、舞台芸術にはアウトリーチという視点(感情論ではなく、誰にでも活用できる ツールとしての手法)が必須だと痛感していることと、そうした活動をなさっている平田さんが、コミュニケーションについてどんなことを考えているのかにつ いて、知りたかったからです。
<演劇を通じて、言葉や空間に関心を持ってみよう。>
三重県総合文化センターのレセプションルームに、30人ほどの参加者(今回は平田さんのワークショップを受けたことのない初心者が対象) が集まって、午後1時開始。老若男女を問わず、バラエティ豊かなメンバーがそろっている様子。
「このワークショップは、演劇を通じて言葉・空間に関心を持って頂くためのものです。このワークショップを受けたからといって、演技がメキメキ上手になるわけではありません。」穏やかな声で、そう話しはじめた平田さん。カンタンなストレッチから和やかにワークショップは動き出しました。
ストレッチ1.
1.2人1組、背中合わせで座る・・・相手とくっついている背中の面積が広くなるようにリラックスしながら、ゆっくりと左右に揺らす。主体的に揺らすのでなく、相手に任せるように。腕は組まないで。
2.背中をゴツゴツケンカさせるようにぶつけ合う…「こちらの方が得意でしょう?」という平田さんのコメントに、参加者から笑い声が起こる
3.仲直り。揺らす。今度はまわしてみたりする
4.背中合わせのまま、腕を組んで立ち上がる。膝を曲げ、足の裏をしっかりと地面に付けて立つのがポイント。…なかなかうまく立てない人が続出。内まただったり、呼吸が合っていないとだめ。“相手の気配を感じること”。→相手との信頼関係をつくるゲーム。
ストレッチ.2
1.3人1組、1列に並ぶ。等間隔に距離をそれぞれが取り、マンナカの人を振り子のように動かす。これも相手との信頼関係を築くためのゲームで、サッカー選 手などの間でメンタルトレーニングとして使われる。また、虐待を受けた子どもなどは、まったく出来ない子がいる。・・・ワークショップで活用されるような コンタクトワークは、欧米から入ってきたものが多い。やっていくと、人に身を任せることの気持ちよさを味わえるようになるが、欧米の我の強い人向けのプロ グラム(主体性を削ぐ方向のワーク)であることを念頭におく。日本人はやり過ぎると危険。
ストレッチ.3
声を出す。好きな言葉(果物で好物なものや、好きな色など)を大きな声で言いながら、自分と同じ言葉を言っている人どうしでグループになる・・・相 手が見つかったら手をつないで、グループごとにかたまって座る・・・うまくグループになれる人と、仲間を見つけられない人とがいる。傾向としては、ある人 はすぐにグループとして集まれるが、うまくいかない人は毎回1人だったり。。・・・参加者の個性が少しずつ出はじめる。“行ってみたい外国は?”との問い かけに、1人だけ“行きたい国はない!”と頑なにバッテンを手でつくってグループ化されるのを拒む少女がいた。
ストレッチ.4
大きな輪になる・・・2~4チームに分かれる・・・2人1組。1人にアイマスクを渡す・・・アイマスクを装着してフロアを歩き回るAに対してパート ナーのBは、人とぶつからないように誘導。声は出さないで、左に行かせたいときは左肩・右に行かせたいときは右肩を押し、止めたいときは両肩をつかむ。 チョコっと触るのでなく、意志を伝えるようにおしてあげること・・・怖々とパートナーにさわっている人多い。Aのすぐ後ろにいて、両手を常に宙に浮かせて スタンバッテいる状態の人が大半。→相手への信頼を築くため
Bの番。今度はBが歩いている間に、誘導する側のAが他のAとアイコンタクトで入れ替わる・・・Bは自分が誰に誘導されているかわからない・・・入 れ替わることに夢中でパートナーがぶつかりそうになっているのに気付かない人もいる。誘導している人の表情がイタズラっこのようになっていく。A同士の秘 密の共有がそうさせている?→誘導者がわからない=世界を信頼するワーク
盲人の介助体験に使われるワークで、戸外に出て行われることもある。
ストレッチ.5
フロアのはしっこに、ガムテープを貼りつける平田さん。参加者から4人を選んで、その対角線上に横一列に並んでもらう。他の参加者は順番に、アイ マスクをしたまま4人のいるところまでダッシュ!目が見えないので、怖い。最初は勢いのある人も、途中で急に失速したり、両手を前に差し出したまま走って くる人や、途中で止まる人、アイマスクを取ってしまう人、足音をバタバタと立ててしまう人、歩幅が極端に狭い人や、「きゃああーーーーーーー、こわいいい いいーー!」と叫びながら走っていく人など、反応はさまざま。女性は女性で、男性は男性で行うという配慮。より信頼を深めていく方向にワークは進んでい く・・・小学生に人気のあるゲームで、人の目測での距離と実際の違いを感じるワーク。
ストレッチ.6
ストレッチ3の応用。参加者には1~50までの数字が書かれたカードが配られる(配られたカードは自分以外には見せない)・・・「ここは、友達を見 つけるためのパーティーだと仮定します。」・・・配られたカードの数字が大きいほど“活発な趣味”を持っていて、数字が小さいほど“おとなしい趣味”の持 ち主を演じる。普段の自分の趣味ではなく、架空の趣味を持つ人物を演じること・・・5分間、カードを隠したままいろんあ人と話し合う。数時以外は何を話し てもOK。“趣味が近い!”と合意したらペアで座る。ベストパートナーを探すゲーム・・・4人以上で話すのはNG。座るときは2人1組。座ったら、ペアの 変更はできない・・・相手を選んでいく作業だが、あまりに慎重だと相手がどんどん減っていく。かと言っても焦ってはいけない・・・楽しそうな人、ギクシャ クした感じで話す人、カードをチラチラ見る人、身振り手振りが活発な人、笑顔ではちきれそうな人、ごく親しい友達に話しかけるようにラフな人、次々に相手 を訪ねてまわる人、そこで話し込んでしまう人、早々に合意する人、悩み続ける人・・・最後は決めきれない6人が残るも、最終的には何とか合意・・・趣味の 事例・・・49:各地の戦で闘う+48:空中ブランコ、50:合意かレストランで毎日食事+41:豪華客船で世界旅行、14:写真+12:音楽鑑賞、9: 読書+5:猫をさわること、4:読書+2:外をぼんやりと眺める、38:お琴+6:華道・・・中間の趣味ほど合意が微妙にんる傾向。自分にとっての“活発 さ”と相手のそれ=基準は違う。また、一人ひとりの言葉から受けるイメージは違う。勝ちたいなら、趣味そのものを聞くだけでなく、その趣味を活発かそうで ないかを聞く。・・・普段のコミュニケーションでは、相手を知りたいから質問をする。ゲームになってしまうと“答え”だけを聞くが、それは不自然。これは 演劇にも言えること。セリフの裏には、伝えたい想いがある。→プロの役者の訓練にも使われるワーク。
ストレッチ.7
参加者は2列に向かい合って並ぶ。目の前の人とペアに。エア・キャッチボール。見えないボールでペアでキャッチボールをしてみる。“どうかな、この 距離?この間隔でいいかな?”いろいろ工夫してみる・・・自然と声をかけあう参加者・・・次に本物のボールを使ってリアル・キャッチボール。エアとリアル を交互にやってみることで、感覚の違いを感じる・・・感想を参加者に聞く平田さん。「スピード感が実際と想像とではずいぶん違います。」「思っていないと ころにボールが飛んで行ったり落ちたりしてしまう。」「投げることに集中してしまうと声が出ない。」「想像だと動きがオオゲサになってしまう。」「ボール ばかり見て相手を見ていない。」「ボールがないと、視線がウツロになる。」・・・リアルとエア=想像上では、人にはこんなにもハッキリとした違いが出るん ですね。平田さんは“人間は実際には合理的に動くもの。小さな動きの積み重ねをよく観察して下さい。”とおっしゃっていました。一般の人が意識していない 動きを再現できるのが役者だ、とも。
ここで、“イメージの共有”についてお話がありました。人が持っている(内包している)イメージは、自分が思っているよりもバラバラだそうです。世 の中にはイメージを共有しやすいものと、そうでないものとがある。共有しやすいものの例として、実際に参加者5名くらいでエア長縄跳び(笑)!をしたので すが、意外なほどみなさん、ちゃんと縄跳びに見えるパフォーマスになっていました。「うまく縄跳びの演技をしようと思ってたわけではないですね?ただ、上 手に縄を跳ぼうとしただけでしょう?」みんなが経験したことのある行為、誰がやっても同じ動き、一定のリズム、大きな動き、繰り返し、身体全体を使うも の・・・こうした動作は再現しやすいんですね。そして、ここが大切なんですが、行為を行っている人のキンチョウ感(ここでいうと縄に引っかからないよう に、呼吸を合わせて跳び続けること)が観ている人にも伝わること。舞台上での演技が客席に届くというのは、キンチョウ感の共有なんですね。演劇とは2つの 要素が含まれているものだというコメントも。“心と身体”“記憶と感情”“○○と、○○”・・・。舞台ではイメージの共有が出来ない人がいると(役者のこ とかな)1人でもいると、その舞台は台無しになるのだとか。役者全員で、空気というか世界を構築していく作業が、そこではなされているんでしょうね。
観客は、イメージの共有しにくいものを見たいと思っている存在なのだとか(自分をふり返っても、確かにそう思えるかな)。心は見えにくいですし、イ メージは共有しにくいです。蜷川さんの作品は、はじめの10分に“サプライズ”なシーンを入れて観客を取り込む演出がなされるそうですが、これは“驚き” が人にとって共有しやすいものだから。イメージしにくいものを、イメージしやすいものに着地させるにはその前後の構成を整えてあげる必要があるんですね。 クサイ台詞をいきなりぶつけられても、観客は引いてしまうけど、きちんと設定がなされた場面でのクサイ台詞は決してクサイモノにはならない。イメージの共 有には、構成が大切。
ストレッチ.8
バレーボールくらいの大きさをイメージして、これまでの話を参照にエアキャッチボール。自分の動作をしっかりと相手に見せるように動く。参加者はさ まざまな動きを見せます。“両手で投げる/床を転がす/オーバーヘッドパス!/高く掲げて投げる”自然と、動きの中に相手とのかけ声がうまれていました。 自分たちが何をしようとしているか、相手と共有しようとすると声が出る。標準的な動きを再現するよりも、模索しながら自分たちなりの動きを見つけた方が共 有しやすい・・・いろんな発見があったようです。
次は大きな(1.5メートルくらい)のボールを想定して、3人でキャッチボール。いろんな動きがここでも出始める。台本になると急に単純な読みに なってしまいがちですが、普段はもっといろんな声で話しているのが人というもの。舞台上の動きも、もっともっと色があるはず。これは、プロでも行ウォーム アップなのだとか。空間イメージを共有するワークで、共有できれば出来るほど強い演劇になるのだとか。集団になると、ウソがバレヤスクなるので、1人1人 の力を底上げしていくことが大切だそうです。
<休憩>
テキストを読みながら
ようやく、テキストを使ったワーク。イスを4つ並べ、役割を振って参加者に順番に台本を読んでもらう(使用戯曲は平田オリザさんの作品2つから)。平田さんの指示は「何が書いてあるかだけを読めばいいです。出来るだけ相手を見て下さい。」
でも、役者さん(もしくは役者ということに関心がある人)は、ここからすでに“演じてしまう”ものらしいです。自分の中のイメージで台詞を読んでし まう。相手とのすり合わせもしていない状態なので、やはり外から見ているとそれはチグハグだったりします。平田さんは、そんな参加者をみながらその都度ユ ニークな指示を追加します。「じゃあ、寝転んでコレ(通販カタログ!)でも見ながら、テキトウに読んでみて。」驚くのですが、そうして読まれた方が場や、 呼んでいる役者さんのキャラクターにピッタリ来る。イタズラっぽく、ヘンテコな恐竜のフィギアを床に置いて「これ、見てから台詞を言ってみて。」など、思 わず笑ってしまうこともしばしばなのですが、これもまた適切に場を整えていくことにつながっているので、本当に見ていて飽きない。
平田さんが考える演劇は、雲の上にある美しいセリフ回しをめざすのではなくて、日常の話の中にこそ豊かさがあるということ。リラックスした、無色の 状態からつくっていき、またリセットして戻れる・・・台詞の中の言葉に引っぱられないのが役者だとおっしゃっていました。印象的なお話ですね。
次に、イスから参加者を立たせて、いろんな条件を加えていく。同じセリフが、イスに座った状態で読まれるのと違った様相を呈してきます。歩きながら 話される台詞、後ろから通り過ぎて行く人に挨拶をしながら話される台詞、決められたエリア内で話し終えなければならない台詞、時計をチラリと見て立ち止 まって話される台詞・・・。台詞を話している参加者+通行人の参加者。通行人の方はそれぞれの個性で、いろんな即興を起こしてきますし、それも見ていてオ モシロイんです。次々に付加される条件の中で、演じている人の方向が自然と決まっていくような、もちろん、演者の中には内的プレッシャー(話さなきゃ、反 応しなきゃ、ここで時計を見なきゃ、あの場所までに話し終えなきゃなど)があって、そのキンチョウ感がにじんでくるんですね。意識が集中し過ぎないように 分散されて、それが不思議なくらいにリアルに見える。
人間の動きを“意識させたり”“自由にさせたり”それらを“組み合わせたり”しながら、新鮮な気持ちで演じることが大切。演劇は練習すれば上手にな るというものでもないとか。意識して演じていない=どのような意識でそのとき自分がいるのかを考え・感じていること。多くの観客を前にすると“正しく言お う/きちんと伝えよう”と台詞に集中しすぎてしまう傾向が強いので、負荷をかけて意識を分散させることをやってみる。近代演劇が翻訳台本からはじまり、非 常に言いづらいものであったことも、こうした“如何に言うか”に力点を置いた考え方が根付いてしまった要因だとのこと。平田さんの演劇は現代口語演劇、というのでしたね。演出家とは、登場人物の関係性をつくってあげる、役者がそこに気づきを覚えるように仕組んでいくことが大切なんだそうです。役者さんだって、指示されているだけでは、いつまでも育ちませんし、楽しさが持続しませんからね。
でも、この設定は年齢や国民性などによっても違ってくるのだとか。例えば、旅の途中の列車の車内。向かい合わせの状況で見知らぬ相手に“話しかける かどうか”は大きく違う。日本人なら、まず若者はほとんど声をかけませんね。だけど、アメリカではほとんどの人が“あいさつする”んですね(相手に敵意を 持っていないことを知らせるためのコーションとして)。コミュニケーション能力というのは、うまい・ヘタなのではなく、社会の変化によって求められている のであれば“身につけたい”力。イギリスでは階級のよって使う言葉が違い、日本や韓国では敬語が発達しています。これは、国や社会といった文脈の中で個性 やイメージが異なるものとして現れてくるということ。演劇においても、役者と演出家が1つの台詞を異なる文脈の中で理解しているということは起きえます。
“話しかけない”文化が根付いた日本で、“話しかける”ための言葉は、知っている言葉ではあっても“普段使わない言葉”になります。知っていても使 わない言葉は、それが言えそうな身近さを伴っていると(=言えそう)それが使われていない言葉・コンテクストの外にある言葉だと気付けない。だからこそ、 若い人は、いろんな世界にふれてコンテクストを広げていくことが大切なんですね。
平田さんの驚くべきところは、参加者の心理的状態=その台詞を言うのにピッタリのコンディションを見つけるために、ご自分の戯曲をどんどん変化さ せていくところです。“列車の中で向かい合わせ”この状況で見知らぬ相手に話しかけるには、どんな状況なら自然に声をかけれるのか?ここを考えるのが“演 劇”だとも。よくありがちな“登場人物がノリウツッタかのように”とか“演じる人=この場合は話しかける人の気持ちになって演じなさい”などとは明らかに 違います。“話しかけられる感覚”をつかむために、戯曲に新たな台詞を補助線として加筆していくんです(加筆は、だけど感覚がつかめたら消してしまっても 構わないもの)。
また、舞台上で大切な“間(マ)”についてのお話では、自分がどう話すかを意識化すること=間を取るとかということをお話しされました。役者にとっ て、舞台上での沈黙は1秒であっても長く感じるのだそうですが、その沈黙・間は観客が妄想を膨らませている時間。役者は物語の先を知っていますが、観客は 知りません。けれども、長すぎる沈黙・間=妄想時間は無限に続くものではありませんから、適切なタイミングで間を取ること・・・勇気を持って、観客が退屈 する“3秒前”くらいまで引っ張る(笑)ことも大切なことだそうです。
チームで作品を発表
参加者は1チーム4名(一部5名)でチーム分け。台詞が自然なコンテクスト=文脈の中で話されるように工夫(1.2つある台本のどちらかを選ぶ →A.台詞を一部加筆する/B.台詞は変えずに演出を変える・・・AとBのどちらでいくか、チームごとに決める)して、作品を発表するということを行いま した。
このAとBを選ぶということは、実は役者としてA.大衆的な演劇を行いたいのか、B.前衛的な演劇を行いたいのか、というセレクトともつながるとの ことでした。自分が役者として、どこで演じたいのか(大きな劇団に所属して大劇場で演じたいのか/小劇場系といわれるカンパニー、もしくはフリーで小規模 な劇場で演じたいのかを明確に選びつつ、また演じる場によって演じ分けられるのがプロの役者なんですね。
参加者はそれぞれ、ユニークな作品を発表しました。平田さんはそれをニコニコしながらご覧になって、メモを取る。そして、すべての発表が終わった ら、それぞれのチームへの評価(設定されたシチュエーションが分かりにくいとか、その台詞はもう少し突っ込んだ言葉が必要だ、など)をしていきます。1つ 1つとても、ていねいに評価されているのが印象的でした。
平田さんは、本当に演劇を愛しておられるんだと実感しました。何度も何度もくり返して実施されているはずのワークショップ。ですが、目の前の参加者 の様子をときには爆笑しながら見ているんですね。それは、演じる人によって作品がどんどん変化すること=目の前の人の個性とその組合せのによって立ち現れ る多彩さを楽しんでいるかのようです。1つの戯曲によって、人を見つめているのでしょうね。
4時間という長時間にわたるワークショップ。参加者の方はもちろん、取材させていただいた私も本当に楽しい時間でした。取材ノートに4時間ずっと書 き続けでした。コミュニケーションの育て方、演劇とは何か、ひとりひとりに備わった個性とそれらが戯曲世界の中で交わって放つ光彩。そうしたことを再発見 できた時間と場所でした。参加者のみなさん、平田さん、本当にお疲れ様でした。
+++++
青年団プロジェクト公演「隣にいても一人 三重編」
演劇の世界では、あまりにも著名な平田オリザさん。私などがここでヘタな説明をすることなどまったく不要な気がします。それよりも、なぜ私が平田さんのワークショップに関心を持ったのかを前書しておく必要があると思います。
・感情だけで語らない、論拠の明確なアウトリーチとアーティスト・イン・レジデンス
・ワークショップを通じたコミュニケーションに関する考え方
これら2点について、どうしても知りたいと思ったのです。なぜならば、舞台芸術にはアウトリーチという視点(感情論ではなく、誰にでも活用できる ツールとしての手法)が必須だと痛感していることと、そうした活動をなさっている平田さんが、コミュニケーションについてどんなことを考えているのかにつ いて、知りたかったからです。
<演劇を通じて、言葉や空間に関心を持ってみよう。>
三重県総合文化センターのレセプションルームに、30人ほどの参加者(今回は平田さんのワークショップを受けたことのない初心者が対象) が集まって、午後1時開始。老若男女を問わず、バラエティ豊かなメンバーがそろっている様子。
「このワークショップは、演劇を通じて言葉・空間に関心を持って頂くためのものです。このワークショップを受けたからといって、演技がメキメキ上手になるわけではありません。」穏やかな声で、そう話しはじめた平田さん。カンタンなストレッチから和やかにワークショップは動き出しました。
ストレッチ1.
1.2人1組、背中合わせで座る・・・相手とくっついている背中の面積が広くなるようにリラックスしながら、ゆっくりと左右に揺らす。主体的に揺らすのでなく、相手に任せるように。腕は組まないで。
2.背中をゴツゴツケンカさせるようにぶつけ合う…「こちらの方が得意でしょう?」という平田さんのコメントに、参加者から笑い声が起こる
3.仲直り。揺らす。今度はまわしてみたりする
4.背中合わせのまま、腕を組んで立ち上がる。膝を曲げ、足の裏をしっかりと地面に付けて立つのがポイント。…なかなかうまく立てない人が続出。内まただったり、呼吸が合っていないとだめ。“相手の気配を感じること”。→相手との信頼関係をつくるゲーム。
ストレッチ.2
1.3人1組、1列に並ぶ。等間隔に距離をそれぞれが取り、マンナカの人を振り子のように動かす。これも相手との信頼関係を築くためのゲームで、サッカー選 手などの間でメンタルトレーニングとして使われる。また、虐待を受けた子どもなどは、まったく出来ない子がいる。・・・ワークショップで活用されるような コンタクトワークは、欧米から入ってきたものが多い。やっていくと、人に身を任せることの気持ちよさを味わえるようになるが、欧米の我の強い人向けのプロ グラム(主体性を削ぐ方向のワーク)であることを念頭におく。日本人はやり過ぎると危険。
ストレッチ.3
声を出す。好きな言葉(果物で好物なものや、好きな色など)を大きな声で言いながら、自分と同じ言葉を言っている人どうしでグループになる・・・相 手が見つかったら手をつないで、グループごとにかたまって座る・・・うまくグループになれる人と、仲間を見つけられない人とがいる。傾向としては、ある人 はすぐにグループとして集まれるが、うまくいかない人は毎回1人だったり。。・・・参加者の個性が少しずつ出はじめる。“行ってみたい外国は?”との問い かけに、1人だけ“行きたい国はない!”と頑なにバッテンを手でつくってグループ化されるのを拒む少女がいた。
ストレッチ.4
大きな輪になる・・・2~4チームに分かれる・・・2人1組。1人にアイマスクを渡す・・・アイマスクを装着してフロアを歩き回るAに対してパート ナーのBは、人とぶつからないように誘導。声は出さないで、左に行かせたいときは左肩・右に行かせたいときは右肩を押し、止めたいときは両肩をつかむ。 チョコっと触るのでなく、意志を伝えるようにおしてあげること・・・怖々とパートナーにさわっている人多い。Aのすぐ後ろにいて、両手を常に宙に浮かせて スタンバッテいる状態の人が大半。→相手への信頼を築くため
Bの番。今度はBが歩いている間に、誘導する側のAが他のAとアイコンタクトで入れ替わる・・・Bは自分が誰に誘導されているかわからない・・・入 れ替わることに夢中でパートナーがぶつかりそうになっているのに気付かない人もいる。誘導している人の表情がイタズラっこのようになっていく。A同士の秘 密の共有がそうさせている?→誘導者がわからない=世界を信頼するワーク
盲人の介助体験に使われるワークで、戸外に出て行われることもある。
ストレッチ.5
フロアのはしっこに、ガムテープを貼りつける平田さん。参加者から4人を選んで、その対角線上に横一列に並んでもらう。他の参加者は順番に、アイ マスクをしたまま4人のいるところまでダッシュ!目が見えないので、怖い。最初は勢いのある人も、途中で急に失速したり、両手を前に差し出したまま走って くる人や、途中で止まる人、アイマスクを取ってしまう人、足音をバタバタと立ててしまう人、歩幅が極端に狭い人や、「きゃああーーーーーーー、こわいいい いいーー!」と叫びながら走っていく人など、反応はさまざま。女性は女性で、男性は男性で行うという配慮。より信頼を深めていく方向にワークは進んでい く・・・小学生に人気のあるゲームで、人の目測での距離と実際の違いを感じるワーク。
ストレッチ.6
ストレッチ3の応用。参加者には1~50までの数字が書かれたカードが配られる(配られたカードは自分以外には見せない)・・・「ここは、友達を見 つけるためのパーティーだと仮定します。」・・・配られたカードの数字が大きいほど“活発な趣味”を持っていて、数字が小さいほど“おとなしい趣味”の持 ち主を演じる。普段の自分の趣味ではなく、架空の趣味を持つ人物を演じること・・・5分間、カードを隠したままいろんあ人と話し合う。数時以外は何を話し てもOK。“趣味が近い!”と合意したらペアで座る。ベストパートナーを探すゲーム・・・4人以上で話すのはNG。座るときは2人1組。座ったら、ペアの 変更はできない・・・相手を選んでいく作業だが、あまりに慎重だと相手がどんどん減っていく。かと言っても焦ってはいけない・・・楽しそうな人、ギクシャ クした感じで話す人、カードをチラチラ見る人、身振り手振りが活発な人、笑顔ではちきれそうな人、ごく親しい友達に話しかけるようにラフな人、次々に相手 を訪ねてまわる人、そこで話し込んでしまう人、早々に合意する人、悩み続ける人・・・最後は決めきれない6人が残るも、最終的には何とか合意・・・趣味の 事例・・・49:各地の戦で闘う+48:空中ブランコ、50:合意かレストランで毎日食事+41:豪華客船で世界旅行、14:写真+12:音楽鑑賞、9: 読書+5:猫をさわること、4:読書+2:外をぼんやりと眺める、38:お琴+6:華道・・・中間の趣味ほど合意が微妙にんる傾向。自分にとっての“活発 さ”と相手のそれ=基準は違う。また、一人ひとりの言葉から受けるイメージは違う。勝ちたいなら、趣味そのものを聞くだけでなく、その趣味を活発かそうで ないかを聞く。・・・普段のコミュニケーションでは、相手を知りたいから質問をする。ゲームになってしまうと“答え”だけを聞くが、それは不自然。これは 演劇にも言えること。セリフの裏には、伝えたい想いがある。→プロの役者の訓練にも使われるワーク。
ストレッチ.7
参加者は2列に向かい合って並ぶ。目の前の人とペアに。エア・キャッチボール。見えないボールでペアでキャッチボールをしてみる。“どうかな、この 距離?この間隔でいいかな?”いろいろ工夫してみる・・・自然と声をかけあう参加者・・・次に本物のボールを使ってリアル・キャッチボール。エアとリアル を交互にやってみることで、感覚の違いを感じる・・・感想を参加者に聞く平田さん。「スピード感が実際と想像とではずいぶん違います。」「思っていないと ころにボールが飛んで行ったり落ちたりしてしまう。」「投げることに集中してしまうと声が出ない。」「想像だと動きがオオゲサになってしまう。」「ボール ばかり見て相手を見ていない。」「ボールがないと、視線がウツロになる。」・・・リアルとエア=想像上では、人にはこんなにもハッキリとした違いが出るん ですね。平田さんは“人間は実際には合理的に動くもの。小さな動きの積み重ねをよく観察して下さい。”とおっしゃっていました。一般の人が意識していない 動きを再現できるのが役者だ、とも。
ここで、“イメージの共有”についてお話がありました。人が持っている(内包している)イメージは、自分が思っているよりもバラバラだそうです。世 の中にはイメージを共有しやすいものと、そうでないものとがある。共有しやすいものの例として、実際に参加者5名くらいでエア長縄跳び(笑)!をしたので すが、意外なほどみなさん、ちゃんと縄跳びに見えるパフォーマスになっていました。「うまく縄跳びの演技をしようと思ってたわけではないですね?ただ、上 手に縄を跳ぼうとしただけでしょう?」みんなが経験したことのある行為、誰がやっても同じ動き、一定のリズム、大きな動き、繰り返し、身体全体を使うも の・・・こうした動作は再現しやすいんですね。そして、ここが大切なんですが、行為を行っている人のキンチョウ感(ここでいうと縄に引っかからないよう に、呼吸を合わせて跳び続けること)が観ている人にも伝わること。舞台上での演技が客席に届くというのは、キンチョウ感の共有なんですね。演劇とは2つの 要素が含まれているものだというコメントも。“心と身体”“記憶と感情”“○○と、○○”・・・。舞台ではイメージの共有が出来ない人がいると(役者のこ とかな)1人でもいると、その舞台は台無しになるのだとか。役者全員で、空気というか世界を構築していく作業が、そこではなされているんでしょうね。
観客は、イメージの共有しにくいものを見たいと思っている存在なのだとか(自分をふり返っても、確かにそう思えるかな)。心は見えにくいですし、イ メージは共有しにくいです。蜷川さんの作品は、はじめの10分に“サプライズ”なシーンを入れて観客を取り込む演出がなされるそうですが、これは“驚き” が人にとって共有しやすいものだから。イメージしにくいものを、イメージしやすいものに着地させるにはその前後の構成を整えてあげる必要があるんですね。 クサイ台詞をいきなりぶつけられても、観客は引いてしまうけど、きちんと設定がなされた場面でのクサイ台詞は決してクサイモノにはならない。イメージの共 有には、構成が大切。
ストレッチ.8
バレーボールくらいの大きさをイメージして、これまでの話を参照にエアキャッチボール。自分の動作をしっかりと相手に見せるように動く。参加者はさ まざまな動きを見せます。“両手で投げる/床を転がす/オーバーヘッドパス!/高く掲げて投げる”自然と、動きの中に相手とのかけ声がうまれていました。 自分たちが何をしようとしているか、相手と共有しようとすると声が出る。標準的な動きを再現するよりも、模索しながら自分たちなりの動きを見つけた方が共 有しやすい・・・いろんな発見があったようです。
次は大きな(1.5メートルくらい)のボールを想定して、3人でキャッチボール。いろんな動きがここでも出始める。台本になると急に単純な読みに なってしまいがちですが、普段はもっといろんな声で話しているのが人というもの。舞台上の動きも、もっともっと色があるはず。これは、プロでも行ウォーム アップなのだとか。空間イメージを共有するワークで、共有できれば出来るほど強い演劇になるのだとか。集団になると、ウソがバレヤスクなるので、1人1人 の力を底上げしていくことが大切だそうです。
<休憩>
テキストを読みながら
ようやく、テキストを使ったワーク。イスを4つ並べ、役割を振って参加者に順番に台本を読んでもらう(使用戯曲は平田オリザさんの作品2つから)。平田さんの指示は「何が書いてあるかだけを読めばいいです。出来るだけ相手を見て下さい。」
でも、役者さん(もしくは役者ということに関心がある人)は、ここからすでに“演じてしまう”ものらしいです。自分の中のイメージで台詞を読んでし まう。相手とのすり合わせもしていない状態なので、やはり外から見ているとそれはチグハグだったりします。平田さんは、そんな参加者をみながらその都度ユ ニークな指示を追加します。「じゃあ、寝転んでコレ(通販カタログ!)でも見ながら、テキトウに読んでみて。」驚くのですが、そうして読まれた方が場や、 呼んでいる役者さんのキャラクターにピッタリ来る。イタズラっぽく、ヘンテコな恐竜のフィギアを床に置いて「これ、見てから台詞を言ってみて。」など、思 わず笑ってしまうこともしばしばなのですが、これもまた適切に場を整えていくことにつながっているので、本当に見ていて飽きない。
平田さんが考える演劇は、雲の上にある美しいセリフ回しをめざすのではなくて、日常の話の中にこそ豊かさがあるということ。リラックスした、無色の 状態からつくっていき、またリセットして戻れる・・・台詞の中の言葉に引っぱられないのが役者だとおっしゃっていました。印象的なお話ですね。
次に、イスから参加者を立たせて、いろんな条件を加えていく。同じセリフが、イスに座った状態で読まれるのと違った様相を呈してきます。歩きながら 話される台詞、後ろから通り過ぎて行く人に挨拶をしながら話される台詞、決められたエリア内で話し終えなければならない台詞、時計をチラリと見て立ち止 まって話される台詞・・・。台詞を話している参加者+通行人の参加者。通行人の方はそれぞれの個性で、いろんな即興を起こしてきますし、それも見ていてオ モシロイんです。次々に付加される条件の中で、演じている人の方向が自然と決まっていくような、もちろん、演者の中には内的プレッシャー(話さなきゃ、反 応しなきゃ、ここで時計を見なきゃ、あの場所までに話し終えなきゃなど)があって、そのキンチョウ感がにじんでくるんですね。意識が集中し過ぎないように 分散されて、それが不思議なくらいにリアルに見える。
人間の動きを“意識させたり”“自由にさせたり”それらを“組み合わせたり”しながら、新鮮な気持ちで演じることが大切。演劇は練習すれば上手にな るというものでもないとか。意識して演じていない=どのような意識でそのとき自分がいるのかを考え・感じていること。多くの観客を前にすると“正しく言お う/きちんと伝えよう”と台詞に集中しすぎてしまう傾向が強いので、負荷をかけて意識を分散させることをやってみる。近代演劇が翻訳台本からはじまり、非 常に言いづらいものであったことも、こうした“如何に言うか”に力点を置いた考え方が根付いてしまった要因だとのこと。平田さんの演劇は現代口語演劇、というのでしたね。演出家とは、登場人物の関係性をつくってあげる、役者がそこに気づきを覚えるように仕組んでいくことが大切なんだそうです。役者さんだって、指示されているだけでは、いつまでも育ちませんし、楽しさが持続しませんからね。
でも、この設定は年齢や国民性などによっても違ってくるのだとか。例えば、旅の途中の列車の車内。向かい合わせの状況で見知らぬ相手に“話しかける かどうか”は大きく違う。日本人なら、まず若者はほとんど声をかけませんね。だけど、アメリカではほとんどの人が“あいさつする”んですね(相手に敵意を 持っていないことを知らせるためのコーションとして)。コミュニケーション能力というのは、うまい・ヘタなのではなく、社会の変化によって求められている のであれば“身につけたい”力。イギリスでは階級のよって使う言葉が違い、日本や韓国では敬語が発達しています。これは、国や社会といった文脈の中で個性 やイメージが異なるものとして現れてくるということ。演劇においても、役者と演出家が1つの台詞を異なる文脈の中で理解しているということは起きえます。
“話しかけない”文化が根付いた日本で、“話しかける”ための言葉は、知っている言葉ではあっても“普段使わない言葉”になります。知っていても使 わない言葉は、それが言えそうな身近さを伴っていると(=言えそう)それが使われていない言葉・コンテクストの外にある言葉だと気付けない。だからこそ、 若い人は、いろんな世界にふれてコンテクストを広げていくことが大切なんですね。
平田さんの驚くべきところは、参加者の心理的状態=その台詞を言うのにピッタリのコンディションを見つけるために、ご自分の戯曲をどんどん変化さ せていくところです。“列車の中で向かい合わせ”この状況で見知らぬ相手に話しかけるには、どんな状況なら自然に声をかけれるのか?ここを考えるのが“演 劇”だとも。よくありがちな“登場人物がノリウツッタかのように”とか“演じる人=この場合は話しかける人の気持ちになって演じなさい”などとは明らかに 違います。“話しかけられる感覚”をつかむために、戯曲に新たな台詞を補助線として加筆していくんです(加筆は、だけど感覚がつかめたら消してしまっても 構わないもの)。
また、舞台上で大切な“間(マ)”についてのお話では、自分がどう話すかを意識化すること=間を取るとかということをお話しされました。役者にとっ て、舞台上での沈黙は1秒であっても長く感じるのだそうですが、その沈黙・間は観客が妄想を膨らませている時間。役者は物語の先を知っていますが、観客は 知りません。けれども、長すぎる沈黙・間=妄想時間は無限に続くものではありませんから、適切なタイミングで間を取ること・・・勇気を持って、観客が退屈 する“3秒前”くらいまで引っ張る(笑)ことも大切なことだそうです。
チームで作品を発表
参加者は1チーム4名(一部5名)でチーム分け。台詞が自然なコンテクスト=文脈の中で話されるように工夫(1.2つある台本のどちらかを選ぶ →A.台詞を一部加筆する/B.台詞は変えずに演出を変える・・・AとBのどちらでいくか、チームごとに決める)して、作品を発表するということを行いま した。
このAとBを選ぶということは、実は役者としてA.大衆的な演劇を行いたいのか、B.前衛的な演劇を行いたいのか、というセレクトともつながるとの ことでした。自分が役者として、どこで演じたいのか(大きな劇団に所属して大劇場で演じたいのか/小劇場系といわれるカンパニー、もしくはフリーで小規模 な劇場で演じたいのかを明確に選びつつ、また演じる場によって演じ分けられるのがプロの役者なんですね。
参加者はそれぞれ、ユニークな作品を発表しました。平田さんはそれをニコニコしながらご覧になって、メモを取る。そして、すべての発表が終わった ら、それぞれのチームへの評価(設定されたシチュエーションが分かりにくいとか、その台詞はもう少し突っ込んだ言葉が必要だ、など)をしていきます。1つ 1つとても、ていねいに評価されているのが印象的でした。
平田さんは、本当に演劇を愛しておられるんだと実感しました。何度も何度もくり返して実施されているはずのワークショップ。ですが、目の前の参加者 の様子をときには爆笑しながら見ているんですね。それは、演じる人によって作品がどんどん変化すること=目の前の人の個性とその組合せのによって立ち現れ る多彩さを楽しんでいるかのようです。1つの戯曲によって、人を見つめているのでしょうね。
4時間という長時間にわたるワークショップ。参加者の方はもちろん、取材させていただいた私も本当に楽しい時間でした。取材ノートに4時間ずっと書 き続けでした。コミュニケーションの育て方、演劇とは何か、ひとりひとりに備わった個性とそれらが戯曲世界の中で交わって放つ光彩。そうしたことを再発見 できた時間と場所でした。参加者のみなさん、平田さん、本当にお疲れ様でした。
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青年団プロジェクト公演「隣にいても一人 三重編」